台風のあとで
台風が過ぎると一気に涼しくなり、途端に季節がきっぱりと変わったのを感じる。
人に言われて日の短さにようやう気づき、
網戸の外の虫の音を聞きながら一日の終わりに夕飯をつつく。
ひと頃は、常夏の国が陽気でいいな、と思っていたが、
秋の訪れを感じる物哀しさも四季の移り変わりがあってのことで、
こういう移ろいに日本人は情感豊かに育まれているのかもしれない。
一年に四回、季節が終わり、その度に寂しさや物悲しさを感じ、
新しい季節の到来に喜びや新しい始まりを感じる。
この繰り返し――。
歩道橋の下に満開の秋桜
ようやく雨があがり、足早にでかける人
走っていく子どもたちの声
その下に雨水にぬれた満開の秋桜――
いつか来た道――
まだ若かった母に手をひかれて歩いたような
こどもの頃を想い出すような、なつかしい道
石畳のうえに夏を燃やしつくしたように枯れた葉が落ちる
雨上がりの草むらからコオロギの声