nenkoro’s diary

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『グロテスク』桐野夏生著 ブックレビュー

桐野夏生著『グロテスク』読了。🍀

桐野夏生さんの本は中年女性の心情を描くのを得意とするのか、中年女性を主人公としている作品が多い。桐野夏生作品を読むのは、『だから荒野』『夜の谷を行く』『東京島』『柔らかい頬』に次ぐ5冊目である。

どれも章ごとに登場人物各々の視点から同じ場面が語られる。人は同じ場面を共有しても自分の視点からしか物事をとらえず、それが全てだと考える。

しかし、桐野さんのこの手法で描かれた本を読むと、こうも人により見方やとらえ方が違うものかと新鮮な驚きと発見なのだが、考えてみると人により立場も性格も異なるのだからさもありなん、ということだ。

だから、章の数だけ、登場人物の数だけ物語があることになる。1粒で2度おいしい、といった感じ。2度どころじゃないのだが。

さて、『グロテスク』は1997年に起きた東京電力OL殺人事件をモチーフにしている。一流企業に勤務し、社内で高い役職をもつ高学歴女性が、退社後は夜の街に立ち自ら客引きを行い売春をし、安アパートで変死体となって見つかった事件。今から20年以上の事件であるが、その昼の姿と夜の姿のギャップの大きさは世間に衝撃を与え大々的に報道された。私もこの事件のことはよく覚えている🙄

さて、本書ではその事件をモチーフにして平凡な主人公、主人公の美貌の妹、高校時代の友人達の来し方を描いている。

中でも、容疑者となる中国人の反省文と言われる手記は、過酷な中国での生活が描かれ、これだけでも本になりそうな読み応えのあるパートでした。

後半では、美貌の妹ユリコの子供が登場しますが、その子の名前が百合男というところでぶっ飛びました。『東京島』では、主人公が壮絶な生き残り競争の末に双子を産む。終盤で突如現れたフィリピン人歌手グループが歌っていたアバの「チキチータ」があり、双子の名前がチキとチータ

これもぶっ飛びましたが😲 『東京島』も1945年に実際に起きたアナタハンの女王事件をモチーフにしています。

情景描写や心理描写など絶妙にうまく、桐野夏生さんの作品を読むと映画を観るように情景を浮かんできます。ラストはえっ???( ;∀;) と驚く意外なもので、う~ん、今回は納得できないなぁ。